サントリーシステムテクノロジーの石川さんと峰崎部屋のWebマーケティングについてお話ししました。

最終更新日

今回も前回に引き続きサントリーシステムテクノロジー株式会社の石川けいさんとお話ししました。

テーマは何と相撲部屋のWebマーケティング。おそらく本邦初公開の内容だと思われます(大げさ)。

峰崎部屋のホームページを2011年から運用

そういえば峰崎部屋のホームページを2011年ごろリニューアル、運用をさせていただくということがひょんなきっかけからありました。

私も以前にちょっとだけお聞きした件ですね。そもそもどんなきっかけだったんでしょうか?

峰崎部屋のおかみさんは、私の入っていた「日本女子大学 相撲研究会」というサークルの先輩でした。おかみさんから「けいさんは、ホームページのことに詳しいんじゃないか」ということでご相談いただいたことが、きっかけだったんです。

峰崎部屋のお悩みは、ケガで引退予定の力士がいて、このままでは在籍力士が2人になってしまうということでした。

2人となると稽古することも難しくなってきますよね。

はい。稽古が成り立たないのでは、部屋を閉鎖しなくてはならないかもしれないという悩みを抱えておられました。また、これまでホームページ運用をお願いしていた方が体調を崩して更新できなくなったので、見てもらえないかという2つの相談がありました。

それなら見てみましょうということで拝見すると、TOPページはアクセスカウンターがついているような状況だったんです。

アクセスカウンター!若い人たちは知らないかもしれないですね。Google アナリティクスのような解析ツールがない時代は、ホームページのアクセス数をカウントしてくれるツールがあったんです。キリ番といって1000人目は○○さんとか書いてあったのが懐かしいです。

新弟子が欲しいとおっしゃるんですけれども、そもそも新弟子募集のページがありませんでした。それでまずは、新弟子募集をホームページで告知し、入門の問合せ用フォームを作りました。

急を要していたので、ランディングページをどうしましょうとか、デザインはどうしましょうとか、じっくり相談するような時間はありませんでしたが、親方が「けいさんが思うようにやってくれればいいから、任せるから」とおっしゃってくれたんです。

というわけで、通常の会社業務で行うように企画書作ったり、稟議を通すなどの工程は、何もかも全部すっ飛ばしました。もう勝手な私の思い込み企画でいきなりランディングページを作っちゃいました。

そこまで信頼してくれた親方もすごいですが、ランディングページが作れる石川さんもすごいですよ。デザインとかの前に何を書いたらいいのかがわからないですよね?

「ターゲットはお母さん」で考えてみました。

中3の男の子が入門しようと思ったとしても、自分1人で人生の決断ができるわけでもありません。お父さんだったら、「じゃあやってみろよ」と背中を押すかもしれないけれど、心配性のお母さんはそうはいかないと勝手に想像しました。

息子からある日突然「相撲部屋に入門したい」と言われたら….私が母親の立場で考えると、大ケガしたらどうするのとか、引退後の生活はどうなるのとか、その先の先まで考えすぎて引き止めると思ったんです。当時相撲界では「かわいがり」の話題がニュースになっておりましたから、さぞかしご両親の心配は大きいだろうと思いました。

ということで、ランディングページは「私たちは、大事なお子さんを責任を持って温かく家族として迎えて、大切に預かりますよ」という雰囲気で作りました。また、部屋を卒業した先輩力士の紹介も行いました。スポーツ経験を生かして整体師となった兄弟子のインタビュー記事を掲載しました。引退後は家族とともに、立派に第二の人生を歩んでおられる姿を紹介し、安心感を持っていただくようにしました。

確かに、お母さんは絶対に心配しますよね。それがこのページなんですね?入門してみようとする男の子、ご両親の知りたいことがリンク先のページなどに書かれていますね。

峰崎部屋の新弟子募集ページ

はい。ページはなんとかできました。

あとはホームページの知名度が低かったので、リスティング広告を出しました。新弟子獲得目的で出稿したんですが、2日後にすぐコンバージョンがありました。しかも立て続けに2本!私自身もびっくりしましたが、周囲の部屋からも、なぜ立て続けに峰崎部屋に新弟子が入ったのか、話題になっていたようです。

相撲の新弟子ってリスティング広告で獲得できるんですね!人材は普通に広告で応募があるので、それと同じと考えれば自然ではあるのですが…驚きです。

リニューアルをしたからといって、検索上位をいきなり取れるわけではないことはわかっていたので、思い切って広告を出してみたんです。当時はスマホ用の広告が始まったばかりだったので、検索されたときに1位よりも上の広告がファーストビューでほぼ全面表示されたため、クリック率は高かったんですね。

今から10年近く前にリスティング広告で新弟子を募集しようと思わないでしょうから、1位というか1つしか表示されないですよね。

私は広告が専門ではなかったので、右も左も分からなかったんですが、「おもしろそうなコトをやっているね!」と、周りの方からずいぶん助けられました。

現在JADEにいらっしゃる小西さんのSEMカフェに相談にうかがったところ、大変親切に教えてくださいました。GAのカスタムレポートでササッとその場で作ってくださって、定点レポートでコンバージョンの効率を見れるようにしてくださいました。そういえば、当初は「not provided」前でした。

アナグラムの阿部さんからもキーワードの起案のコツを教えていただきました。素人の私は、とにかく集客するために人気力士の名前をキーワードで投入してしました。当然、そんなキーワードではサイトの目的と全く合っていないので、コンバージョンするわけがありませんでした。

阿部さんはターゲットに置かれた立場を中心に広い視点でキーワードを発想されまていました。中学3年で進学を考えるのか、就職を考えているのか、そういう方向性もあるんじゃないのということでした。その発想でもキーワードを広げてみて、効率がいいものを調整していく方法もあるよ、と教えてくださったんです。

相撲の新弟子募集の案件なんかないでしょうから、皆さん楽しく考えてくれますよね。ところで、予算はどのようになっていたのでしょうか?

予算はないですよ。リニューアルは全て私のボランティアですし、広告費は私が自腹で払っていました。そういう無粋なことを親方に言うつもりは全然なかったですし、むしろ勉強料を払っている気持ちでした。

会社の業務で広告を出していたら、運用は代理店に任せ、管理画面を自分では見ずに月次でレポートと報告を受ける流れになっちゃうことが多いと思うんです。広告費が自腹だったおかげで、ものすごく真剣に取り組み、非常に勉強になりました。コンバージョンを取れないキャンペーンは垂れ流さないように急いで調整しないといけないとか、切実でした。

会社の業務だったら、分業化が進んでいるので、企画・ライティング・デザイン・コーディングなど、全てを一人でやらないですよね。そもそも私はSEO担当で広告は素人です。コーディングも自分でやることもないですからね。

親方から「何でもやっていいよ」と言っていただいたので、サイトでいろいろ実験的なこともできたりして、楽しませていただきました。親方とおかみさんには、何十倍にもお礼をしていただきましたし、貴重な経験をさせていただき感謝の気持ちでいっぱいです。

自腹で広告費を出すと、ワンクリックがいかに貴重かって分かってきますよね。こんなので数百円もかかって、あっという間にこんなにかかるの!ってなりますから。

最終的には10年以上継続

ホームページ運用は長く続いたんですか?

最終的に10年以上やらせていただきました。
ご相談いただいてから、親方の定年まで運用して、間もなくサイトは閉鎖しようかなというところです。相撲部屋で公式Facebookページを開設したのは多分うちが一番最初でしたし、おかみさんのInstagramもかなりすてきです。

プロのライターさんやカメラマンを使っていなくて、おかみさん目線の独自のコンテンツが結構面白くて、独特の味があるんじゃないかなと思います。

間に誰か入っちゃうと、どうしても自然な感じがなくなりますよね。相撲部屋ホームページ運営って大変じゃないですか。番付とか勝敗とか更新する情報がいっぱいあると思うのですが?

はい、場所中の勝敗更新は大変でした。本当はCMSを導入して、管理画面で簡単に更新できるようにしたかったですし、レスポンシブ化もモバイル対応もしたかったんですが、自分の技術不足でできないまま終わってしまいました。

10年はすごいですね。年6場所で15日ずつありますし、取組の時間もばらばらですから。

場所中の勝敗は応援してくださる方の一番の関心事なので、GAで見ても連日トラフィックが増えます。そのため即日更新は非常に重要でした。部屋付の行司さんからLINEで当日の勝敗を連絡を受け取り、私は会社から帰宅後にHTMLを手動で更新していました。慌しかったけど楽しかったですね。

しかも15日間が終わったら番付発表があるし、巡業の予定は出るしやることはいっぱいですよね。

番付発表があると、過去ページをバックナンバー化していくのも全部手動です。力士が改名すれば、四股名を相撲字の画像を作りました。ファイル名のネーミングルールは悩みましたね。

四股名がURLに入っていると、四股名が変わったからといって変更できないですもんね。リダイレクトするのも面倒ですし。このあたりのSEO的なことは何かされましたか?

力士名検索でリッチ表示に成功

10年も運用していると、引きのあるキーワードはこれだなとか、入門検討する人が共通で知りたいことはわかってきました。ココで具体的なキーワードを言っちゃうとネタばれになっちゃいますけれども、新弟子検査の流れや、身長・体重の基準、入門は何歳までなのかという情報をすごく気にしておられる方がいたので、それは分かりやすく説明するようにしました。

このあたりの募集要項的なのは検索されやすいですよね。

ホームページは間もなく閉鎖しますが、「ドメインだけは手放さずに保持してくださいね!」と、親方に伝えました(笑)。

誰かが年寄名跡を引き継ぐとなった時にとっても重要ですよね。年寄名跡とセットにしたいぐらいです(笑)。

10年前には、なかった構造化データ実装やAMP対応もやってみたかったですね。結局できませんでしたが。

相撲部屋のホームページが構造化されてAMP対応ってやりすぎなぐらいですね。

あとは…力士名で検索したときに、勝敗の白黒・黒星がリッチ表示されていた時期があって面白かったですね。a2iの大内さんが当時Googleに在籍されていて、その画面をお見せしたら大笑いしてました。「リスティング広告で相撲レスラーを獲得したとか、外人に大ウケしそうなネタだから、海外メンバーにシェアしていい?」って言われましたw

そりゃ力士名で検索するのって日本人が多いでしょうし、それでリッチ表示されて、リスティング広告で新弟子をコンバージョンしたなんて日本人でも笑いますからね(笑)。

最近は知らない人も多いかもしれませんが、いまは無き、Google+もやりました。新着情報を投稿すると、ナレッジパネルに大きな写真が表示されてアピールしました。広告費を使わなくてもできる工夫はなんでも試してみました。

本当にWebマーケティングをされていたんですね。まだまだ話は尽きないですがこのへんで。

まとめというか

何もかもが未知の世界でした。新弟子募集のページを自分で作ってしまうのすごいですし、自腹でリスティング広告を出稿して新弟子を獲得してしまうとか、力士名検索でのリッチ表示など、まさにWebマーケティングを実践されていたとは思いませんでした。

ネットの世界に疎い業界はまだまだ伸びしろがありそうだと思ったインタビューでした。

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