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「究極のBtoBマーケティング ABM(アカウントベースドマーケティング) 」を読んだ

BtoBのマーケティングって遅れているイメージがあります。名刺(リード)を獲得して連絡して訪問して・・・という古典的なことしかやっていない。この書籍にもマーケティングと営業のよくあるやり取りとしてそのあたりが書かれていますが、否定するわけではなくて営業さんを理解して全社で効率的なマーケティングをするにはどうすればいいのか?という内容になっています。

AMBという新しい概念と現状の問題に紙面が多く割かれていますので、AMBとは何ぞや?という人にピッタリの書籍だと思います。

※日経BP社様から本をいただきました。ありがとうございます。

ABMの定義など

全社の顧客情報を統合し、マーケティングと営業の連携によって、定義されたターゲットアカウントから売り上げの最大化を目指す戦略的マーケティング (P.15)

こうなっています。
マーケティングと営業の連携、ターゲットアカウントの定義、戦略的なマーケティングと聞くとどこかで聞いたことがあるように思いますが、こちらを読むとよりわかりやすいです。ちょっと長いですが引用します。

 ABMはその名の通り「マーケティング」です。そのマーケティングの設計思想に営業視点を入れたものなのです。
 たとえて言うなら、一つの湾のような巨大な養殖イケスの中に船を入れ、養殖している魚の中から獲りたい魚だけに銛を打つようなものです。こうすれば、外洋を走り回るような効率の悪さもなく、必要とする質の魚だけを収穫できます。
 つまりABMを実施するのは必ずイケスのような仕組みが必要です。それがデマンドセンターなのです。デマンドセンターが無く、デマンドジェネレーションの経験もナレッジの無い企業がABMに取り組むのは不可能だと私が考えているのは、これが理由なのです。 (P.71)

漁師に頼るのではなく、マグロしかないイケスを作るのではなく、自分だけが漁をすることができる専用の海を持つということですね。そうすれば、イケスを作る技術(マーケティング)も活きますし魚を獲る漁師の腕(営業)も活きます。どっちが良いというわけではなくて長所を活かして共存する。これがABMのようです。

第1~3章:ABMの成り立ち・概念など

前述のようなことが書かれています。なぜ必要なのか、どんな概念なのか、どういった企業にあっているのか、などです。イントロ的な章なのでABMを初めて学ぶ人はここをしっかり読んでおくとよいと思います。CRM・SFA・MAと別物ではなくて利用するということも書かれています。

第4章:ABMが効果を発揮するところ

「引き合い依存」からの脱却、新規顧客の獲得・新市場への参入支援、に効果的であると書かれています。

すでに取引がある場合は「引き合い」で何とかなっていても、新規開拓をしようと思うと接点がないので何もできなくなってしまいます。手持ちの名刺に当たりしだい接触しても相手のブラックリストに載ってしまうだけですし。得意先の成長に依存せずに自分たちの力で開拓する力をつけるためにABMはもってこいのようです。

第5章:バトルドクトリンを変える

歴史が好きな人はとっても面白い章です。バトルドクトリンとは戦闘教義のことで得意技とか勝ちパターンのことです。

「マケドニア・ファランクス」、「レギオン」、「騎馬3軍団編成」といった言葉にピンと来た人には伝わりやすいと思いますので、ABM導入を理解するためにはここから読んでみてもいいかもしれません。逆に詳しくない人は飛ばしても問題ないと思います。

第6章:デマンドセンターの整備

ここがABMの肝です。ここを整備せずには何も動きませんので面倒でもちゃんとやっておかないといけない部分。

・マーケティングの基本設計
・そのマーケティングを行うことを企業戦略としてトップマネジメントが承認し、社内に宣言する
・基本設計を時系列に並べ、いつ、どこでどのようなツールと、どのようなスキルを持った人材がどのくらい必要かを拾い出す
・以上を事業計画に落とし込み、その実現のために必要な予算を確保し、実行する (P.148)

ABMってのがいいらしいから導入しよう!って騒いでもダメということですね。今までの勝ちパターンで上手くいきそうにないとなったときに、どのパターンにすれば良いかを考えて会社方針として発表する、あとは必要なリソースを整えて実行するという流れです。

会社全体に影響があることなので、テスト的に・・・と初めても部署間にまたがる連携ができずに「また効果なかったよね」となって終了です。

新たな取り組みなので効果が出るまでに時間がかかることを考えて、先手を打って準備しておきたいところです。

第7,8章:ABMで具体的にやることと流れ

最期の2つの章でやっと具体的な流れになります。それだけ概念と準備が必要ということになります。

実際に始めてみるとここに書かれていることだけでは不足しているように思いますので、それぞれの関連書籍を読むか今後出てくるであろうABM関連書籍を読んだりセミナーに参加して補ったほうが良さそうです。持っている名刺などのデータ量にもよりますが、書籍を読んだ限りではどれだけ早くても半年、そこそこ早くて1年はかかりそうなので、理解の部分は今のうちに済ませておきたいところです。

右肩上がりで成長していた時代も終わりましたし、少子高齢化で日本の状況は大きく変わっていますので、今までのやり方を根本から見直すタイミングだと思います。そんな時ヒントになる書籍なのでいざという時に備えて読んでおきたいですし、導入しなくても考えはとても参考になりますのでマーケティングに関わっている人は読んでおくべき本ですね。

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庭山 一郎
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