運営堂ブログ

「越境EC&海外Webマーケティング“打ち手”大全」を読んだ

世界へボカンの徳田さんから本をいただいたのと、自分でも買っていて2冊あるので感想などを。

越境ECって聞くと、「なんだか大がかりなことを始めるような気がして、ちょっと腰が引けるな~」と感じる人もいるかもしれませんが、この本はそういう「最初の一歩」が踏み出せていない人にぴったりの本です。越境ECの全体像をつかみながら、どんな準備が必要で、何に気をつけるべきかが、章立てで丁寧に解説されています。派手なテクニックではなく、実務的で着実なステップが中心なので、安心して読むことができると思います。

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「海外ユーザーはすでに来ている」ことに気づく

特に印象に残ったのが、7項目目の「日本語ECサイトにも海外顧客がいる」という部分。

日本語のままのECサイトでも2〜8%程度は海外からのアクセスがあるので、いきなり英語サイトを立ち上げるのではなく、自社の今のECサイトでテストマーケティングを始める。そのなかで実際に海外ユーザーがどう動いているか、どこで離脱しているのか、何がハードルになっているのかを把握する。これが越境ECの第一歩になるという提案は、とても現実的で納得感がありました。

このあたりは以前にジグザグさんににお聞きしたことと同じでしたので、定番というかここからなんでしょうね。

今度こそ越境ECを成功させたい! でも失敗もしたくない――そんなEC事業者さんのために、ノーリスクで始める方法をジグザグに聞きました

「成約を阻害する7つの大罪」

越境ECに取り組むうえで最も重要なのが「不安を取り除くこと」だと強調されていたのが13項目目です。海外から見ると、日本の小さなECサイトは「どこの誰かわからない」という不安の塊です。

以下が7つの大罪。7つの大罪はあの漫画が浮かびますが。

外国語が不自然

信頼性が感じられない

実在する企業か疑わしい

決済手段が少ない

レビューがない

返品方針が不明

個人情報保護方針が不明


これらがあるだけで購入をやめる理由になります。細かい部分であっても、海外のユーザーには強い「壁」になってしまいます。おかしな日本語の通販サイトが怪しいと思うのと同じですよね。本の中では、これらを一つひとつ改善する方法も紹介されていて、「ここは今すぐ直せるな」と思える箇所も多くありました。

配送料と関税

越境ECにおける大きなつまずきポイントとして紹介されていたのが送料と関税です。

「送料無料」と書いてあっても、実際には送料が商品価格に上乗せされていて、Amazonなどの他ECサイトとの価格差でバレてしまうケースもあります。購入者にとっては「なんでこっちは高いの?」という疑念になります。

また、関税についても見落とされがちです。購入後に関税の請求が来て「聞いてない」となると、受け取り拒否や悪いレビューに直結します。レビューサイトに否定的なコメントが載ると、今後の販売にも影響が出ます。

これらを防ぐために、Return Helperなどの物流サービスを活用した在庫配置や、関税の事前徴収の仕組みなどが紹介されており、実務にすぐ取り入れられるノウハウが詰まっていました。

最近はトランプ関税も話題で、トランプ関税の影響について世界へボカンさんの記事もありました。

トランプ関税とは?トランプ米大統領による「相互関税」が越境ECに及ぼす影響とは?

海外在住より「日本にいる外国人」が先

18項目目では、ターゲット顧客の順番について書かれています。

越境ECというと、すぐに海外在住の顧客に目が行きがちですが、実は日本国内にいる在住者・旅行者・留学生などの外国人にアプローチする方がずっと現実的だと指摘されています。

具体的には、以下のような分類です。

日本在住の既存顧客

日本在住の新規顧客

インバウンド客

海外在住の既存顧客

海外在住の新規顧客

この順番で取り組むことで、越境ECへの移行もスムーズになります。「知っている人」から少しずつ距離を伸ばしていくような考え方は非常に実践的ですし確実ですよね。

失敗する人の多くは一番下の「海外在住の新規顧客」を捕まえようとして、お金をたくさんかけたけど…というパターンです。

店舗もマップも英語にしておく

23項目目ではGoogleマップの活用が取り上げられていました。地図アプリとして世界中で使われているGoogleマップですが、英語表示にしたときに日本語しか出てこないお店が多いという問題があります。「Googleビジネスプロフィール」を活用すれば、無料で店舗情報を多言語対応にできますし、Google検索の「ローカル検索」結果で上位に出やすくなるので、訪日外国人への導線としても有効です。

ozieの柳田さんにお話をお聞きした時も同様の話をされていたので、実店舗を持っている人はこれも定番でしょう。

コツコツ続けるのが成功の鍵 ozie柳田さんが語る越境EC成功への道

会員登録時の「名前」は想像以上に効く

36項目目で紹介されていたのが、会員登録のフォーム設計に関する話です。越境ECの場合、初回訪問でいきなり購入してもらうのは難しいため、まずは会員登録を目的とする設計が良いとされています。そこで活用できるのが「名前」。ファーストネームだけでも入力してもらうと、メールなどで「Hi, John」のように呼びかけられるようになります。英語圏では、名前を使ってパーソナライズすることが非常に効果的で、関係性の深まりにつながります。

フルネームではなくファーストネームだけを求めるのがポイントだそうで、英語圏では、名前も個人情報と捉えられるため、聞きすぎると警戒されてしまう可能性があります。

日本人には違和感しかないですが…海外の習慣に合わせないといけないので頭に入れておきましょう。

SEO対策は最初の設計がすべて

42項目目では、越境ECサイトのSEOに必要な3つの要素が紹介されています。

海外展開専用のブランド名の決定

ドメイン取得と多言語サイトの開設

多言語アノテーションタグの実装

本格的に取り組むには時間とお金がかかりますので、最初の段階でしっかり設計しておかないといけないですね。「いまは1ヶ国だけ」と思っていても、あとから変更するのは手間がかかるので、最初から余白を持った設計にしておくことをおすすめします。

あとからは本当に大変。

まとめ

「越境EC&海外Webマーケティング“打ち手”大全」は、テクニカルな知識だけでなく、文化や心理、実務運用までをカバーした内容です。どの章を読んでも「実際に現場で使える知識」が詰まっていて上っ面のノウハウではないですし、触れていないですが海外でのクラウドファンディング、Amazonでの施策も書かれています。

越境ECに興味はあるけれど、まだ踏み出せていない方。でにやっているけれど思うように成果が出ていない方。そういった方にとって、この本は「何度も読み返す価値がある一冊」になると思います。