ザ・モデルを基準に運営堂式を考えたら成立要件が見えてきた

自分のやっていることを整理したあとで、そういえば普通のマーケティングはザ・モデル的に考えてやってるんだよな~、と思いました。
皆さんご存知のザ・モデルはざっくり書くと、マーケティングが見込み客を集めて、インサイドセールスが電話やメールで見込みを確かめて、フィールドセールスが商談して、カスタマーサクセスが導入後を見る、という分業のやり方ですね。ファネルも近い話で、認知から興味、比較、購入と、順に絞り込まれていく形を想定しています。
うちの場合はその方法を採っていません。というかできません。そのへんの違いを考えてみました。
なぜ普通はそっちに行くのか
私が考えるザ・モデルが選ばれる理由を書いておきます。
数字がないと予算が下りない
リードが何件、商談化率が何%、受注が何件。これが言えないと、上司も役員も判断できません。上の人は現場を見ていないので、数字でしか状況が分からないんですよね。
つまりザ・モデルは、顧客に向けた仕組みという以上に、社内向けの説明装置として働いている面があります。一人だと説明する相手がいないので、この機能がまるごと要らなくなる。
人が入れ替わる
担当者は入ってきますし、異動しますし、辞めます。その人にしかできないやり方だと引き継げないので、工程に分けて誰でもできる形にしておく必要がある。
急ぐ必要がある
投資を受けていれば、成長率が要ります。5年後に思い出してもらって問い合わせが来ます、では回収の時期が合わない。投資を受けていなくてもこんなゆっくりではないでしょうし。
当たれるだけの母数がある
「1000件当たって3件」を繰り返せる。人がいて予算があるから成立する話ですね。
条件を並べてみる
整理すると、ザ・モデルが成立する条件はこのあたりです。
- 人を抱えていて、分業できる
- 社内に説明する相手がいる
- 担当が入れ替わる前提がある
- 成長を急ぐ理由がある
- 確率で回せるだけの母数がある
- 需要を自分で作りに行く
うちは一つも当てはまりません。
一人なので分業できないし、説明する相手もいない。誰にも引き継ぎませんし、急ぐ理由もない。母数は知っている人の数しかなくて、需要は作りに行っていません。
なので合わないというより、条件を満たしていないという話です。
人はそんなに思い通りに動かない
もうひとつ、ファネルの形そのものが実感と合わないところがあります。
ファネルは人が段階を順に降りていく前提で作られています。知って、興味を持って、比べて、買う。でも実際は行ったり来たりしますし、3年止まっていることもあるし、いきなり最後から来ることもある。何年も前に会った人から突然連絡が来る、というのが普通に起きます。
ここは母数が大きければ問題にならないんですよね。個別のズレは歩留まりという平均に吸収されて消えるので。母数が小さいと、ズレしか残りません。個別の事情しかない状態に確率のモデルを当てても合うわけがない。
運営堂式の絞り込みは自然だった
ザ・モデルには絞り込む工程があります。集めた見込み客を、インサイドセールスが確かめて、見込みのないものを外す。工程として存在していて、誰がやっているかも分かるし、何件外したかも数えられる。見えるようにして管理しているわけですね。
うちにはその工程がありません。誰も選んでいないし、断ってもいない。
でも実際には、来る人はある程度絞り込まれるというか傾向が決まっています。急いでいない人、初対面ではない人、自分でやろうとしていて、どうしても分からないところで来る人。丸投げしたい人は来ませんし、答えだけ欲しい人も来ません。
工程がないのに、なぜそうなるのか。出しているものの性質のほうに、絞り込みが埋まっているからだと思います。
売り込まない
売り込まれたい人が来ません。何かを勧められて、それを買うという形で解決したい人からすると、読んでも何も出てこない。
事実しか書かない
答えを出してほしい人が残りません。こうしたほうがいいですよ、とは書かないんですよね。数字と、やってみたらこうなったという事実を並べて、判断は読む人がする。決めてほしい人からすると、物足りない。
毎日出す
その頻度に耐えられない人が離れます。週に一回なら読めるけど毎朝は無理、という人は解除していきます。
広告を入れない
広告から来る層が入ってきません。
実務の話しかしない
業界の大きな話や、これからの展望を知りたい人には合わない。
一つずつは出し方の決めごとでしかないんですが、全部が同じ方向に効いていて、結果として読む人が決まっていきます。読み続けている時点で、この出し方に合っている人ということになっているんですよね。
だから解除は失敗ではないんですよね。合わない人が離れているだけなので、選別が働いた結果でしかない。チェックする数字は解除数だけでいい、と本にも書きましたが、増えたら内容が変わったということなので、そこだけ見ていれば足ります。
ザ・モデルは絞り込みを見えるようにして管理する。運営堂式は絞り込みを出すものに溶かして見えなくする。拒絶はしなくて相手が良い意味で離れていくイメージ。
成立する条件
では逆に、運営堂のやり方が成立している条件は何かを考えました。
測られないこと
これが一番大きいと思います。
数字を持たされると必ず動かしにかかります。開封率が目標になれば件名を工夫するし、反応の良いネタに寄っていくし、問い合わせが目標になればCTAを入れる。そこで、事実だけを書くという側が崩れます。
チェックする数字は解除数だけと本に書きました。解除数は動かしにいく数字ではなくて、増えたら内容が変わったと分かるだけのものです。動かせない数字しか見ていない状態が条件になっています。
待てること
今月の売上がこれで決まらない状態であること。すでに仕事があるから、いつ来るか分からないものを続けられます。
一周が同じ人(グループ)の中で閉じていること
実務をやって、そこから集めて、加工する。ここが同じ人か固定のグループの中にないと、他人の情報を通しただけのものになります。一人である必要はないんですが、この三つを切ると成立しません。
内容を自分で決められること
承認が要ると事実だけを書くのが難しくなります。都合の悪いことも書けなくなる。書けなくなると、中身が信用できるという側面が崩れます。ここは最終が社長確認でもいいですが、内容を過度に添削しないしないことが大切です。
個人の名前と結びついていること
思い出してもらう対象が人なので成立しています。このメールはこの人が書いているよね、と認識されるようなイメージです。
押して届く形を持っていること
過去の記事は残りますが、見に来てもらわないと接触はゼロです。残っているから大丈夫、にはならない。メールやポッドキャスト配信のように、こちらから届く形を持っていないと、止まった時点で忘れられます。
止まらないこと
積み上がるけれど、止めた瞬間から目減りする性質です。続けられる量に抑えてあることが条件になります。
ザ・モデルは管理するための仕組みで、うちのやり方は厳重に管理されていないから成立している。そこが分かれ目かなと思います。
向いている状態
条件からすると向いているのは停滞している会社だと思います。
仕事はあるが増えていない。紹介は来るが待っているだけ。そういう状態なら、実務はあるし、待つ余裕もある。
伸びている会社は急ぐ理由があるので、ザ・モデルのほうが早い。食えていない会社は、こんなことをしている場合ではありません。両端は向いていないんですよね。
止めるとどうなるか
半年から1年で、はっきり落ちるはずです。止めたことがないので、実際にどうなるかは分かりませんが、いろんな人の記憶から消えていくはずです。消えたらもう1回覚えてもらうのは至難の業。
テレビCMを止めたときと同じで、出稿を止めれば接触がなくなる。記事は残っていますが、取りに来てもらわないと読まれないので、残っていることと届いていることは別なんですよね。
小さな会社でやるなら
一人でやっている話なので会社では無理だと思われるかもしれませんが、工程を人に割り振れば同じことができます。
下の図で言うと、四角は7つあります。依頼、実務、集める、加工する、出す、思い出す、知ってもらう。このうち思い出すは相手側の状態なので、自分で持てるのは6つです。

例えばこんなやり方
制作会社(7人)
社長、営業1、ディレクター2、デザイナー2、事務1。
- 実務・集める・加工する:ディレクター
- 出す:デザイナーが兼任
- 知ってもらう:営業
- 依頼:事務
製造業(10人)
社長、営業1、工場長、班長2、作業者4、事務1。
- 実務・集める・加工する:工場長と班長
- 出す:事務
- 知ってもらう:営業
- 依頼:事務
小売業(8人・店舗)
社長(店長兼任)、副店長、社員2、パート4。
- 実務・集める・加工する:副店長と社員
- 出す:SNSをやっている社員
- 知ってもらう:店頭そのもの
- 依頼:店長
3つ並べると加工を持つ人は役職ではなく、お客さんと話している人だと分かります。制作会社ならディレクター、製造業なら工場長、小売なら売場の社員。社長がやる会社もありますが、それは社長が現場に出ているからですね。
新しく人を雇う話ではないので、既にいる人の仕事に少し足すだけです。
加工が一番空く
四角のうち加工が真っ先に飛ばされます。集めて出すだけでも形になってしまうので、飛ばしても気づかない。飛ばすと要約になります。
一人なら寝かせたり考えたりで自然に加工されます。会社だとそれが起きないので、場を作っておく必要がある。編集会議のようなものですね。週に一回か隔週で30分あれば足ります。
- 実務の人が、今週こんなことがあったと話す
- 聞く側が、分からないところを聞く
- 説明できないところが出てくる。そこはまだ加工されていない
- 出さなくていいものを決める
出るのは実務の人と出す人。実務を知らない人が一人いるほうがいいです。現場の人は当たり前すぎて説明しないので、知らない人が聞かないと出てきません。製造業で事務の人が「なんでこの工程が要るんですか」と聞く、みたいなことですね。
営業も出たほうがいいと思います。営業は客先の話を持っていますが、実務をやっていないので、営業だけでは加工に届きません。持ち帰った話を実務の人と突き合わせると、客が言っていることと現場で起きていることのズレが出てくる。そこが一番いい材料になります。
決裁者は入らないほうがいいです。入ると承認の場になって都合の悪いことが落ちます。
なお、この場は加工でもあり、集めるでもあります。他の人が話したことが自分の材料になるので。
兼任には限界がある
実務が忙しくなっても、真っ先に落ちるのが加工と出すです。目の前の仕事や得意先からの仕事が優先されるので、当然ではあります。
落ちるくらいなら外部に依頼する方法もあります。編集ができる会社もありますし、フリーの編集者もライターもいるので、代わりにできる人はいます。
ただ、外部に依頼できるのは出すところまでです。加工は中の人と一緒にやらないと成立しません。実務を知らない人が集めて出す形にすると、要約に戻るからです。
外部の人に求めることは、書くことよりも、中の人から引き出してつなぐことになります。編集会議に入って、分からないところを聞いて、話を出させる。実務を知らないことが、そこでは強みになりますね。
丸投げできる形ではないので、そこは分かった上で頼むかどうかだと思います。
並べるとこうなる
最後に表にしておきます。
ザ・モデルは選んで導入する設計図で、うちのやり方はやってきたことを整理したら見えてきたものなので、同じ列に並べると対等な選択肢に見えてしまいますが、そこは違うものだと思ってください。
| ザ・モデル | 運営堂式 | |
| 見込み客 | 知らない人を集めて絞る | すでに知っている人 |
| 母数 | 大きいほど効く | 小さくても成立する |
| 需要 | 作りに行く | 発生するのを待つ |
| 時間 | 短くする | 待つ |
| 必要な案件数 | 毎月一定数 | 年に数件 |
| 分業 | 工程ごとに分ける | 一周を同じ人(グループ)が持つ |
| 実務 | 別の工程として切る | 切らない。材料になる |
| 絞り込み | 工程として持つ | 出すものの性質に埋まっている |
| 引き継ぎ | できる形にする | できない |
| 数えるもの | 各段階の歩留まり | 解除数くらい |
| 管理 | 実行するための仕組み | されていないから成立する |
| 止めない理由 | 数字が落ちるから | 止めると目減りするから |
| 向いている | 人を抱えている、成長を急ぐ、社内に説明が要る、担当が入れ替わる | 一人か少人数、停滞感がある、実務をやっている、個人の名前で覚えられている |
条件が違うのでやり方も違う。それだけの話だと思っています。
まとめ
最初に起業芸術論を読みながら考えたように、既にあるものを基準に考えると意外とすっきりしました。
毎月売り上げが変動するのはしんどいですし、固定のお客さんを増やそう…と思っているのでこういったやり方になっているのかもしれません。
皆さんの参考になっていれば嬉しいです。
