「楽をして儲ける」という話をしたら納得してもらえなかったのです。

クライアントの社長に「楽をして儲けるようにしましょう」と言ったら、あまり納得してもらえませんでした。
理由を聞いてみると「手を抜いて儲けると思っているのなら、それはできない」と。そりゃそうだなと思いました。
私が言いたかったのはそういう話ではなくて、先のことを考えておくと結果的に楽になるという意味です。手を抜くのではなく、無駄を減らしてスムーズに進めるための準備の話だったので、そこをちょっと詳しく書いておきます。
なぜ楽をして仕事ができないのか?
楽に仕事ができない原因は2つあります。
1つめは「考えるタイミングが遅い」ことです。
あの件はどうなってますか?素材がないから手配してください。早く○○してください。などなど、問題が起きてから考えるから、あわてますし、焦りますし、迷いながらなので対応に時間がかかります。しかもその間ずっと頭がフル回転なので消耗もしますよね。
しかし、あらかじめ想定しておけば選択肢を「選ぶだけ」で済みます。
スポーツで言えば相手を想定した戦術練習を何パターンもしておくようなもので、これをやっておけば試合中に考えなくても体が動きますから、脳内に余裕が生まれて冷静な判断ができるようになります。
準備の段階で考え切っておけば、現場では落ち着いて動けるようになるんですよね。
2つ目の理由は「人は急には冷静になれない」からです。
想定外のことが起きたときって、「今やってます!」とか「なんでそうなってるの!」とか「先に言ってよ!」とか感情的になりがちで、感情的になってしまうとそこにフォーカスされてしまって、問題対応が全く進まないことになってしまいます。あの言い方が気にくわないからやりたくないとか。その場はしのいでも蓄積されていくと何をするにもギクシャクしてしまいます。
そうならないように事前に対応パターンを作っておけば感情に流されずに動けます。
感情に流されなければ、関係する人たちに感情をぶつけることもないので穏やかに物事が進んでいきます。
準備段階で考えておく5つのこと
1. 最悪<結果≦最高の範囲を目指す
先の展開を想像して、最悪と最高の間に収まるように考えます。
最悪のケースを知っていれば、そうならないようすればいいだけなので気分が楽になりますし、その状況を作り出すことができれば、今度は上積みされていくだけなので、どんどん状況が良くなりますよね。
最高の結果だけを考えるとそこに行きつくために消耗しがちですし、失敗したらどうしよう…と無駄に不安になるので、下から積み上げていくのが良いでしょう。
このへんはその人の性格に応じてということになるのですが。
例:クライアントへの新サービス提案の場合
最悪:予算などの都合で見送り → 興味は持ってもらえるよう資料は残したり今後も継続アプローチ
最高:即決で全部採用 →焦って失言をしないように落ち着いて対応
現実的な着地点:「まず小さく試してみましょう」を目指す
2. 松竹梅の提案を用意する
二択だと「やるかやらないか」になってしまいますが、三択にすると「どのレベルでやるか」という議論に変わります。
1と同じような考え方で、相手にも範囲で考えてもらうということですね。
松と竹の間とか、ここに関しては梅だけど、こっちは松の選択肢がいいよね。という話になりやすいですから、ちゃんとした議論が進んでいきます。
真面目な人だったりせっかちな人ほど選択を突きつけがちなので注意しましょう。
例:ウェブサイト制作の見積もり
松:フルリニューアル + SEO + コンテンツマーケティング + CRM + 運用型広告 + 運用サポート1年
竹:フルリニューアル + SEO + コンテンツマーケティング + 3ヶ月サポート
梅:部分リニューアル + コンテンツマーケティング
3. 相手の反応をシミュレーションする
野球のキャッチャーのように、相手打線を予測するイメージです。
明日の先発投手が決まっていて、相手の打線を考えて、過去の対戦や最近の調子を把握して、1球目はこれから入って…。さらには年間を通した反応をシミュレーションしておくことで良い準備ができます。
こちらの提案にどんな反応が返ってくるか、そのときどう受けるかを考えておくということですね。
以下の動画がとっても参考になります。
例:新規取引先との初回打ち合わせで
「予算が厳しい」と言われたら → 段階的な導入プランを提示
「時間がない」と言われたら → 最短スケジュールの事例を見せる
「他社と比較したい」と言われたら → 差別化ポイントを3つ用意
4. 想定できることはすべて考えておく
あり得ないことを考えて、それ以上にあり得ないことも考える。反対にものすごく当たり前すぎて見逃しがちなことを考えて、拍子抜けするぐらいうまくいくことも考えておく。
「え?」となったらその時点で後手に回っているので、その状況にならないようするわけです。
経験の部分も多いので、提案とか打ち合わせの後は自分の頭の中だったりメンバー間で振り返るのが大切です。
野球のキャッチャーでいえば、今日受けたボールを全球振り返るというやつですね。
この動画を全部見てもらえば何をするかわかると思います。フルタの方程式は学びが多いです。
フルタの方程式 キャッチャーズバイブル
https://www.youtube.com/playlist?list=PLv_EcNe47s5m8PxnHE26O2JcvVLFWceOM
例:大事なプレゼン前なら
あり得ない:決裁者が当日欠席 → 代理の方への資料と説明文を別途用意
当たり前すぎて見落とす:プロジェクターが映らない → USBメモリとPDF版も準備
拍子抜けするほどうまくいく:10分で即決 → その場で次のステップ(契約書、スケジュール案など)を出せるように
さらにあり得ない:予算が2倍に増えた → 追加提案できるオプション案を用意
5. 最終的には考えた通りにならない前提で
ものすごく考えるのだけど、それでも実際は想定外のことが起きます。というか、想定外のことのほうが多いです。
なので、想定外があることを想定しておくと想定外にも落ち着いて対応ができます。
考えたパターンの組み合わせから答えが出るときもあるでしょうし、相手の話していることを聞いていたら過去のパターンにはまる時もあるでしょうし、冷静に何が起きているかを考えましょう。
こちらも真面目な人ほど考えた通りにはめようとするので、最終的には考えたことを忘れるぐらいでいたほうがいいと思います。
例:制作物の打ち合わせで
準備してきた3案を見せるつもりだったのが、相手から「実は方向性を変えたくて…」という話でが出たとしても、焦らずに「どんなイメージですか?」と聞ければいいですよね。相手の話から過去の別案件のパターンに近いと気づけたりすれば、「それなら以前○○社でやったこの手法が使えそうですね」と進めることができます。
落ち着いて対応するために
- 考えてきたことはすぐに話さずに相手の話を聞く
- 想定していたどのパターンに近いかを確認する
- ハマればそのまま進めズレていれば相手の要望を聞く
- 想定した案と組み合わせられないかを探る
- 話をまとめて数か月先までの方向性を決めておく
最もやってはいけないのが、準備してきたことを披露すること。
頭の中で次はこうして…と考えながら進めると、一人で話しているだけで相手は置いてけぼりですし、そもそも会話になっていかないので議論もできないですよね。
まとめ
「楽をして儲ける」というのは手を抜くことではありません。
先を読んで準備をしておくことで当日とその先の未来を楽にすること。その積み重ねが、結果的に余裕を生み、良い成果につながります。
これの繰り返していけば、いろんなことが楽に進むはずです。