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「やれます」で乗り切ってきた19年と重なる、複利で伸びる仕事術

できる人が大事にしている 複利で伸びる仕事術」を著者の宮脇さんから頂きました。読みながら自分のことと重ね合わせてみると、共感できるところが多すぎるというか、共感しかなかったので感想を。

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自分が思ってたこと、考えていたことが文章になっていた

読みながら、自分が歩いてきた19年間の道筋と重なりすぎて何度もうなずいていました。

著者の宮脇啓輔さんは、サイバーエージェントで学んだ仕事の進め方を「複利で伸びる仕事術」としてまとめています。本を読んでいて気づいたのは、自分自身も知らないうちに複利を積み上げていたこと。

意図してやったわけではなく、2006年にフリーランスになって、Googleアナリティクスとの出会い、人前で話す非常勤講師の仕事、平日の情報発信、メディアでの執筆など、いつも「やったことないけど、やれます」という気持ちを持っていました。生き残るためにがむしゃらにやった結果、振り返ってみると「そういう積み上げだったんだな」と気づく程度のものですが。

タイパやコスパが優先される今、短期の成果だけを追っていないか、長期で積み上がる働き方=複利ができているか、という問いは常に持っておきたいです。

「本業でやっていく」という覚悟と複利思考

「20代後半から伸びる人は、成長の土台になるソフトスキルを身につけている」と書かれています。専門技術だけでは行き止まりになることもあり、思考の整理、判断の基準、コミュニケーションの取り方などが成長を後押しするという内容です。

このあたりは、フリーランスになったばかりの頃の自分にそのまま当てはまります。独立したものの収入も少なく不安だらけで、週末は家電量販店でバイトをしながら、稼ぎ方の本を読みあさっていました。ただ、あるときに「バイトで稼ぐなら独立しなくてもいい」という当たり前のことに気づいて、本業でやっていく気持ちだけで踏ん張りました。

振り返ると、この判断が複利の考え方そのものでした。バイトは単利で、その日だけ稼げても積み上がっていきません。一方で、Googleアナリティクスを覚えたり、コンサルの形を作ったり、情報発信を続けたりすることは複利でした。時間はかかっても、あとから効いてくる働き方です。

宮脇さんは「短期成果ではなく複利成長を生む仕事術」を説いていますが、自分の場合は「本業でやる」と決めたことがまさにそれでした。逃げ道を作らず、自分の価値が積み上がる方向だけを見る。その選択が、あとになって大きな複利として返ってきたのだと思います。

「センターピンを見つけて倒す」という話が、とても腑に落ちた

ボウリングで真ん中のピンを倒すと、他のピンが一気に倒れていきます。課題がいくつもあるときに全部に手を出すのではなく、一番影響の大きいところを見極め、そこに集中するという考え方です。リソースが限られる状況では、どこを倒すかがすべてを決めます。私は「重心」ということをよく言うのですがそれと同じですね。

Googleアナリティクスに踏み込んだのも、このセンターピンを見つけたからだったのだと思います。制作会社はどうしても「作って終わり」になりがちですが、クライアントはホームページで成果を出したいと考えています。このズレこそが本質的な課題で、ここを解消すればずっと仕事はあるだろうし、生き残っていけるだろうと思ってました。

制作後のデータを見て改善し、成果につなげていく。放置されているサイトが多いからこそ、継続的に価値を生む仕事になる。しかも、地方のフリーランスでも無料のGoogleアナリティクスを使えばしっかり取り組める。こう考えると、自分にとってのセンターピンは自然と見えてきました。この判断が、その後の19年間の軸になっています。

「サイバーエージェントの上司がいつもセンターピンを問い続けていた」と書かれていますが、自分もクライアントの課題に向き合うとき、必ずこの問いを投げかけています。表面的な問題に振り回されず本質的な課題がどこにあるのか、どこを目指して進んでいけばいいのか、ここを外すとどれだけ頑張っても成果が出ませんから。

バケツに穴が空いていないか疑う

「バケツに穴が空いていないか」という考えもしっくりきます。

成果が出ないときって努力不足を疑ってしまいますが、その前に構造の欠陥を確認するべきだと書かれています。穴の空いたバケツにいくら水を注いでも溜まりません。まずは穴をふさぐことが先です。スキルの不足なのか、戦略のミスなのか、コミュニケーションの行き違いなのか、ツールの問題なのか。構造のどこが詰まっているのかを見ないまま頑張っても前に進まないという話です。

自分が「作業で頑張らない」と決めた判断も、この考え方に近いものがありました。アクセス解析レポートの仕事はたくさんあり、人を増やして拡大することもできました。ただ、作業ベースの仕事は効率化と人数の勝負になり、小さな企業には向いていません。下請けで作業を引き受ける形になれば、流行りが終わってしまうと自分も終わりですからね。バケツの穴が開いてないように見えるけど、小さな穴がじわっと広がっていく状態。

であれば、穴が小さいうちにふさいだほうがいいので、改善の提案と計測を一緒にやるスタイルに変更。レポートは現状を知って課題を出し、改善して結果を見るためのものと考えればいいです。自ずとコンサル的な働き方に切り替わり、穴もふさがっていきました。その代わり、提案の質には責任が伴うので学びや経験への投資は増えていきましたが、先が見えているときって苦にならないものです。

先に価値を提供すると必ず自分を助けてくれる

「価値提供を先にすれば、必ず巡ってくる」という話もしっくりきます。

Give & Take ではなく、Give, Give, Give。見返りを求めずに価値を渡し続けることで、信頼と評判が積み上がり、やがて複利で返ってくるという考え方です。

2013年から続けるメルマガの目的は最初から成果ではありませんでしたが、続けるうちに「読んでいます」と声をかけていただくことが増え、ネットショップ担当者フォーラムさんの連載につながりました。ECzineさんはTwitterで記事の文句を言っていたときに編集長の目に止まり、「文句を言うなら書けるでしょう」と声をかけていただきました。そこから連載や寄稿の機会が増え、「書く人」という認識が広がっていくとはまったく思ってませんでした。見返りを求めずに発信を続けたことで信頼が積み上がり、機会が増えていったんでしょうかね。

短期の利益より、長期の信頼を大事にする姿勢は複利で効いてくるのを実感してます。

すぐに結果が出るものではないんですが、将来の自分を楽にしてくれる積立貯金のようなものなので、ちょっとずつでもやっておきたいです。というかやらないといけない。

「専門性」と「越境」の話も、地方フリーランスの自分にはずしんと響きました。

宮脇さんは深さだけでも広さだけでも足りないと書いています。いわゆるT字型人材です。

一つの分野を深く掘り下げながら、周辺領域にも手を伸ばしていく。専門性がないと仕事を任せてもらえず、越境がないと視野が狭くなる。新しい発想や価値は境界で生まれるという考え方です。

「専門性と越境の両方」と本の中で書かれていて、自分の場合は「Web解析の専門性」を軸にしつつ、「AI活用」「コンサルティング」「教育」「執筆」「スポーツ関連」などへ自然と手が伸びていきました。世間で言われる越境と意識したことはなくて逃げ道をたくさん確保しておいただけでも、普通のWeb解析コンサルタントとは違う価値が生まれ来たと思ってます。

そして50代になった今、その積み重ねが複利として効き始めている感覚があります。専門性一つだけで勝負するのは年齢とともに厳しくなりますが、複数のスキルを掛け合わせて生まれる仕事は、年齢に左右されにくいです。

組み合わせも1+1ではなくて、0.7+0.3+0.4みたいな細かい足し算なので、いろんなことをちょっとずつやっておくといいですね。

「たたき台は、叩かれる余白を作る」と、ADDIEモデルの実践

「たたき台は叩かれる余白を作る」という話も、自分の経験と重なりました。

たたき台の役割は完璧な案を出すことではなく、議論を始めるための土台を用意することだと書いています。少し未完成だからこそ、意見が出やすくなる。完璧に仕上げるほど反応が起きなくなるという指摘です。

この考え方は、非常勤講師として授業をしていた頃に学んだインストラクショナルデザインの考え方そのままです。15回の授業を完璧に作り上げておくのではなくて、受講している学生の反応など見ながら進めていく方法。最初にこちらが出したものを知らないうち学生さんがたたいているイメージ。

初回の授業でアンケートをとり、意気込みや知りたいこと、苦手なことなどを聞く。中間でも再度アンケートをとると、学生の意見は発展してきて、質も上がっていきます。集計した結果はすぐに共有してコメントし、授業に反映させていきました。

提出された課題には、良いところ、改善点、次にやるといいことを丁寧に返します。学生に共通している改善点があれば全体に伝え、今の自分の立ち位置を知ってもらう。次の課題は前回のフィードバックを踏まえて出し、また伸びを確認して返す。この繰り返しです。

意見を聞いてもらえると学生はどんどん話してくれますし、前回よりできたという手ごたえがあると楽しく取り組んでくれます。このスタイルは授業だけでなく、今の仕事でもそのまま根っこになっています。とにかくよく聞く。どこに困りがあるのか、やりづらさはないか、わからないところはないか。聞けば課題が見えてくるので、それを改善して前に進める。少しずつできるようになると、本人も「やればできる」と思えるようになります。

最終的には、楽しく取り組める状態でないと何も進みません。

著者が言う「たたき台に余白を作る」という教えは、自分にとっては「学生やクライアントの声を拾って改善に組み込むこと」でした。完璧な答えを一方的に示すのではなく、一緒に考えて一緒に作っていく。そのプロセスが信頼につながり、成果を生むのだと思います。

目的達成ために直接アプローチするのではなくて、いろんな方向からじわっとアプローチしていく。

気づいたらそうなっていた、という状況を作り出すのが好きです。

「できます」で始めた19年間は、すべて複利だった

読み終わってから、改め自分の19年間を振り返りました。

Googleアナリティクスも、非常勤講師も、情報発信も、メディアでの執筆も、徳島との二拠点生活も、最初は全部「やったことないけど、できます」と言って飛び込んだものばかりです(徳島は違うかも)。

授業では緊張のあまり手元しか見えていなかった頃もありましたし、メルマガは11年も続けるとは思っていませんでした。どれもゼロからのスタートでしたが、続けていくうちに少しずつ積み上がっていき、それぞれがつながり、掛け合わさって、雪だるまのように大きくなっていきました。

まさに複利だと感じます。

宮脇さんは「突き抜けるために必要なのは才能ではなく技術で、仕事は複利で伸びていく」と書いています。自分の場合は「本業でやる」と決めた気持ちだけで乗り切った19年でした。目の前のことに必死に取り組み、どう転んでも生き残れそうな道も確保しておく。それを積み重ねていっただけで、複利を狙って動いていたわけではありませんが、振り返るとすべてが複利になっていました。

もうちょっと早く気づいていれば人生が変わったかもしれない(笑)。

まとめ:「複利で伸びる」とは、未来の自分への投資

まとめとして、本書から感じたことを少し書いておきます。

『できる人が大事にしている 複利で伸びる仕事術』は、タイパやコスパが求められる時代に、短期ではなく長期で伸びる働き方の大切さを教えてくれる一冊でした。サイバーエージェントという成長スピードの速い環境で学んだソフトスキルが、体系的に整理されています。センターピンを見つける話、バケツの穴を疑う話、先に価値を渡す姿勢、専門性と越境のバランス。それぞれが長く効く考え方です。

50代になった今、複利で伸びるとは未来の自分への投資だと感じています。

すぐに成果が見えなくても、焦らずに積み重ねていけばいい。雪だるまが少しずつ大きくなるように、あとから効いてきます。

そんな未来への投資を思い出させてくれる内容でした。

忙しさに流されがちな今だからこそ、一度立ち止まって、自分の仕事の土台を見直す時間をつくるのも良いと思います。

実践的で体系的で、現場の知恵が詰まっています。フリーランスとして自分の経験と重ねながら読めたので、答え合わせのような感覚にもなりました。長期の成長をしっかり考えたい人には、とてもおすすめです。

できる人が大事にしている 複利で伸びる仕事術
著者:宮脇啓輔
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2025年11月21日