運営堂ブログ

【脱・下請け思考】クライアントに振り回されず主導権を持って仕事を進めるための鉄則5+2

先日の毎日堂で以下の記事を紹介しました。

◇自分に主導権が来るような動き方をする。
なぜあの人だけ早く帰れるのか?「仕事が遅い人」と「仕事が速い人」の決定的な違い|リーダーシップ・教養・資格・スキル|東洋経済オンライン
https://toyokeizai.net/articles/-/923011

これについて「私がどうしているか知りたい!」とのコメントがあったので、どんなことをしているのかを書いてみました。

鉄則1:質問は「考えさせる」ではなく「判断しやすくする」

振り回されやすい仕事の進め方で多いのが、「どうしましょうか?」とオープンな質問を投げてしまうことです。丁寧なつもりでも、クライアント側からすると「何を基準に考えればいいのか分からない」「判断して失敗したくない」という心理が働き、返事が止まってしまいます。

主導権を持つ人は、質問の形を変えています。相手にゼロから考えさせるのではなく、「判断(選択)」だけをしてもらう形に整えてから渡すんですよね。

例1:仕様・設計の確認

「今回の目的とこれまでの事例を見ると、Aの仕様が一番無理がなさそうです。ひとまずAで進めてしまって大丈夫そうでしょうか?」
→判断基準を共有したうえで、是非だけを聞く形です。

例2:スケジュールの確認

「全体の流れを考えると、◯日あたりまでに一度見ていただけると、その後が楽になりそうです。このスケジュール感で進めてもよさそうでしょうか?」
→期限をこちらから提示することで、仕事が前に進みます。

例3:修正や変更の可否

「今回の目的から考えると、このまま進めた方が結果は出やすそうです。いったん今回は修正なしで進めてみてもよさそうでしょうか?」
→好みではなく、目的ベースの判断に切り替えます。

ポイントは、考えるための材料をこちらで揃えてあげることです。「YESかNOか」「AかBかCか」と選択肢を用意してあげれば、相手もスムーズに回答できます。選べなかったとしても「それ以外なら何?」と聞かれたら、皆さんも答えやすいですよね。

鉄則2:「聞かれる前に渡す」+「つまづきポイントを先に伝える」

クライアントからのちょっとした問い合わせは、操作ミスよりも「正解が分からない不安」から来ることがほとんどです。「どこを見ればいいか分からない」「自分の理解が合っているか不安」。そうした心理的な負担を減らすために、手順を渡すときは「ここだけ見ればOK」という安心材料を一言添えるようにしています。

  • 「この画面、項目が多くて迷いやすいので、赤枠の部分だけ見てください」
  • 「ここで止まりやすいので、動画の30秒あたりを先に見てもらえると分かりやすいです」
  • 「専門用語が多いので、まずは太字の部分だけ理解できれば大丈夫です」

「全部見てください」と言われると負荷が大きいですが、「ここだけ押さえればOKです」と伝えると安心してもらえます。結果として、問い合わせや認識ズレが減り、自分の集中時間を守りながら相手の信頼も高めることができます。

鉄則3:社内承認で止まっている理由を整理し、動きやすい一案に落とす

案件が止まる最大の理由は、クライアント担当者が「社内で説明できない」状態にあることが多いです。ここで重要なのは、解決策を押し付けることではなく、困っている担当者の相談に乗ってあげることです。

①「どこで詰まっているか」を聞き出す

「誰の承認が必要か」「何が一番ネックになっているか(コスト、リスク、前例など)」を聞き出し、状況を言語化して整理します。

②過去・他社・判断傾向を一緒に確認する

「過去に似た案件が通った理由は?」「他社はどうしているか?」「上司は数字重視か、前例重視か?」など、その会社で通りやすい「考え方のクセ」を一緒に探ります。

③可能性を広く出すけど、渡す案は一つに絞る

自分の中では「松竹梅」や「見送り案」まで広く検討し、メリット・デメリットを整理します。

ただし、クライアントにそのまま全部は渡しません。

最終的には、「今の状況なら、この案が一番通りやすく、動きやすいです」と、シンプルで失敗しにくい一案にまとめます。

④説明の筋道までセットで渡す

「なぜ今この案なのか」「上司から聞かれそうな質問への回答」まで用意します。

ここまでお膳立てすれば、担当者は少しアレンジするだけで社内で説明でき、物事が動き始めます。「そこまでしないといけないの?」と思うかもしれませんが、止まっていては何も変わりません。

「完璧を目指すよりまず終わらせろ(マーク・ザッカーバーグ)」の精神で、とにかく状況を打破することを優先します。

鉄則4:先の見通しを立てて、「今やらなくていい不安」を減らす

クライアントワークが忙しく感じる一番の原因は、「とりあえず今の作業を終わらせて、次のことはまたその時考える」という自転車操業にあります。これでは常に追われている感覚になり、お互いに落ち着きません。意識すべきは、数か月先にやることを「見える化」して提示しておくことです。

たとえば、セミナーやイベントのあと

終わった直後は一区切りつきがちですが、実際には「開催レポート」「フォローメール」「継続発信」などのタスクが残っています。

これらを「この3つを先にやっていくと良さそうですね」と示しておくだけで、クライアントは「次に何が起きるか」を把握でき、余計な不安や確認連絡が減ります。

たとえば、次回に向けた準備(振り返り)

今回時間がかかった点や、次回は省略できそうな点をその場でリスト化し、「次回のためにメモしておきましょうか」と一言添えます。

これだけで単発の作業が「積み上がる仕事」に変わり、継続的な関係につながりやすくなります。

たとえば、季節や時期を先取りする

年末年始や年度替わりなど、決まった時期に発生するタスク(休暇のお知らせ、年始の挨拶記事など)は、こちらから先回りして伝えます。

「ちゃんと先を見てくれている」という信頼につながり、スケジュールにも余裕が生まれます。

鉄則5:今やらないことを決める。将来の引き出しを増やす

仕事が重くなる原因は、やることが多いからではなく、「やらない判断」が曖昧なことにあります。アイデアや要望が次々と出てきたとき、全てをその場で受け止めてしまうと仕事は膨らむ一方です。「今回はやらないこと」をはっきり決めておくことが大切です。

今やらないことは、将来やることリストになる

「今回は予算的に厳しいですが良いアイデアですね」
「スケジュール優先で第2フェーズに回しましょう」

こうした判断は、断っているように見えて、実は「将来のストック」を作っているのと同じです。

残しておいた案は、次回の打ち合わせでそのまま使えます。毎回ゼロからアイデアをひねり出す必要がなくなり、むしろ提案の引き出しが増えていくのです。

新しいものを考えるより、選ぶほうが楽

新しい施策を毎回その場で考えるのはしんどいですが、ストックがあれば、その中から今の状況に合うものを選ぶだけで済みます。考える負荷が下がり、仕事のスピードも安定感も上がります。

主導権を持つというのは、全部を引き受けることではありません。

「今やること」と「今はやらないこと」を整理することです。

聞き方は「生真面目すぎない」くらいがちょうどいい

もうひとつ意識しているのは、堅く、重たい聞き方をしないことです。あまりにも正論で完璧な聞き方をすると、相手は「相談しづらい」「ちゃんとした回答を返さなきゃ」と身構えてしまい、結果として連絡が後回しにされてしまいます。

  • 「ひとまず〜で進めてしまってもよさそうでしょうか」
  • 「実はここが不安で……」
  • 「正直、よく分かってなくて」

このように少し力を抜いた、話しかけやすい余白を残すイメージです。

これができると、「実は上司が気にしているのがそこで……」といった本音も出てきやすくなります。本音が聞ければ先回りがしやすくなり、仕事はかなりスムーズに進みます。

「軽く聞ける空気」を作れる人ほど、実は仕事の主導権を握っているはずです。

提案には責任が伴うので自信は準備量でつくる

「こちらで決める」「選択肢を絞る」といった進め方を紹介してきましたが、実際にやるとなると「判断を間違えたらどうしよう」という不安がよぎると思います。でも、その不安は自然なものです。主導権を持つことは、責任を引き受けることですから。

言い切れるかどうかは、準備量で決まる

「A案でいきましょう」と言い切れるのは、性格の問題ではなく、準備量の差です。書籍やセミナーの知識、他社の事例、自分で試して分かったこと。これらを重ね合わせて、「今の状況なら、確率的にここが一番無理がない」という裏付けがあるから判断できます。

責任を取るとは、正解を当てることではない

責任を取るとは、絶対に失敗しないことではありません。

「なぜその判断をしたのか説明できること」、そして「うまくいかなかった時の次の手を考えていること」。この状態を作っておくことが責任です。

不安は、情報と経験でしか減らせません。自信がなければ調べる。それでも不安なら、もう一段深く考える。そうやって準備を重ねると、自然と「この方向で行きましょう」と言えるようになります。

主導権は無理に握るものではなく、プロとしての準備の結果、自然と自分のものになってくるものだと思います。

まとめ:目先の対応より安定して進む関係をつくる

クライアントワークで忙しさが続くと、どうしても目の前の対応に追われがちになります。しかし、目先の対応だけを続けていると、常に「急ぎ」と「確認」に挟まれ、気持ちが休まりません。

ここまで紹介してきた5つの鉄則に共通しているのは、相手が落ち着いて判断できる状態を作るという点です。

  • 判断しやすい形で聞く
  • 迷いそうなところを先に潰す
  • 社内で動けるように整理して渡す
  • 数か月先の流れを見える形にする
  • 今やらないことを明確にする

先の見通しまで含めて道筋を示せるようになると、お互いに無理のない安定した進め方に変わっていきます。迷わなくていい、急がなくていい、次が見えている。そんな安心感を提供できる人が、結果的に仕事の流れを作っています。

振り回される側から、回す側へ。

「どうしますか?」を「こちらでこう考えています」に置き換えるところから始めてみてください。