AIでウェブサイトが作れるのは喫茶店のおばちゃん対策の続きかもしれない

以前に「AIに評価される」って喫茶店のおばちゃん対策のようなものだと思っているという記事を書きました。
AIってネット上の情報をかき集めて「この会社はこういう会社だな」と推測しているので、言ってみれば噂話をしている喫茶店のおばちゃんと同じです。だから古い情報やちぐはぐな情報を放置していると、変な噂をされてしまう。そうならないように自分のことを自分でちゃんと発信して整えておきましょう、というものでした。
その続編というか、私が衝撃を受けた話です。
情報を整えるのって難しい
理由ははっきりしていてお金と手間です。
地方でもサイトを作るのに最低100万円みたいな話になってきていて、しかも年々高くなっています。制作費だけじゃなくて、ちょっと更新するのにも数万円って言われたりするし、サーバー代もかかるし、CMSの保守などもあります。中小企業からすると「そこまでお金かけられないよ~」となるのが普通かなと思ってます。
そうすると、5年前に作ったサイトをそのまま放置して、たまに連休のお知らせだけ更新する、みたいな状態になりますし、サービス内容が今と合っていなかったりもします。ホームページは24時間働く営業マンとか言われてたい時代もありましたが、ネット上にある看板になっているだけ。
その一方でSNSは毎日のように更新していたりするわけです。
これって手軽さとコストの問題ですよね。
SNSはタダで手軽に更新できるからやる。サイトは更新するのに数万かかるからやらない。それだけのことです。
知り合いの社長が10時間でサイトを作っていた
知り合いの社長がManusでサイトを作っていました。自分が作ったわけじゃなくて横で見ていただけなんですが、だいたい10時間くらいで、社長が頭の中で思っていることがほぼそのまま反映されたサイトができていたんです。
こりゃすごいわ~と思いました。
今まで社長の頭の中をウェブサイトの形にするのって、ものすごく大変だったんですよね。
社長が原稿を全部書いて、それを制作会社に説明して、でもうまく伝わらなくて、できあがったものを見て「ちょっと違う」となって修正して、また説明して……という伝言ゲームをずっとやっていました。しかも、この伝言ゲームの中で、社長の言いたいことが少しずつ薄まっていきます。予算と時間がかかるのはもちろんなんですが、それ以上に熱量と正確さが失われていくのがもったいない。
このあたりがすべて解決しちゃいました。
頭の中とウェブサイトが直結している、という感じがいちばん近いと思います。間に挟まっていたものが全部なくなって、思っていることがそのまま画面になる。これは作り方の問題というよりも、伝え方そのものが変わる話なのかなと思ってます。
私は「AIが作ったの?ダメでしょ」と思っていた側でした。
専門家としてソースがどうとかSEOがどうとか、できない理由のほうを先に並べていました。ところが実際に見たら、その前提がもうひっくり返っていた。その社長にも「森野さん、浦島太郎みたいになってるよ」と言われまして、これはグサグサきました…。
しかも、こうやって驚いている時点で遅いのかも。すでにふつうに使って成果を出している人がたくさんいて、自分は周回遅れで、ただそれを知らずに恥ずかしいことを言っていただけかもしれないという。
更新性が変わると、コンテンツの流れまで変わる
個人的にいちばんすごいと思っているのは更新性です。支援する側の人間からするとここが本当に大きい。
クライアントのサイトを更新するのに何をやっていたかというと、定例ミーティングで社長から近況を聞き出して、それをコンテンツの形にして、校正して、確認をもらって、公開する、という流れでした。ミーティングだけだと出てこないことも多いので、クライアントのメルマガを読んだりSNSを見たりして、普段から動きを追いかけています(受け身の更新をしているところもあるでしょうが)。
この「聞き出す」というのが地味に大変なんです。社長は普段やっていることを当たり前だと思っているので、こちらから「最近どうですか」「何か変わったことありますか」と引き出していかないと出てこない。ヒアリングのスキルが要るんですよね。
Manusだとこの流れが変わります。社長が思ったときに自分で更新するので、その瞬間に新しい情報が生まれる。聞き出す必要がないんです。
そのあとは、更新の差分をManusに送ってもらって担当者が拾い、コンテンツにするか判断するだけでいい。
- そのまま更新情報として載せる
- SNSのネタにする
- メルマガのネタにする
ここで支援側の仕事が「引き出す」から「整える・広げる」に変わるんですよね。ヒアリングで頑張って引き出すんじゃなくて、社長が出したものを整えて、いろんなチャネルに広げていく。役割がけっこう変わるなと思ってます。
しかもサイトが更新されるたびに一次情報が増えていくので、そのままおばちゃん対策になります。AIに拾ってもらえる情報が、新しくて正確な状態でどんどん積み上がっていく。今まではサイトに載せた情報をSNSに展開する流れが多かったんですが、サイトの更新がコンテンツの起点になる、という逆転が起きるかもしれません。
サーバーもCMSもいらなくなるので、ランニングのコストも下がる。やるべきことはわかっていたのにお金と手間でできなかった、という言い訳が消えていく感じです。
とはいえ、気になることもある
すごいと思っている一方で、専門家として気になる点もちゃんとあります。
いまの時点で引っかかっているところを書いておきます。ざっと挙げるとこのあたりです。
- URLが気軽に変わってしまわないか
- ちょっとした更新が多すぎてクロールが追いつくか
- ヒートマップの位置がずれて使えなくならないか
- サービスそのものへの依存
1つめはURLです。手軽に更新できるぶん、気軽にURLが変わってしまうリスクがありそう。URLが変わると内部リンクが切れるし、他のサイトからもらっていた被リンクも無効になりますから検索の評価にも影響します。既存サイトのリニューアルだと301リダイレクトで古いURLから新しいURLに転送する必要があるんですが、FTPでサーバーに入れないManusでそれができるのか、制作の人間じゃないのでまだイメージができていないです。気分でURLが変わるのはちょっと怖いなと思ってます。
2つめはクロールです。ちょっとした更新の頻度が高くなりすぎると、Googleのボットがちゃんとついてこられるのか。クロールが追いつかないとせっかく更新しても検索結果に反映されないので、ここはどうなるんだろうと。
3つめはヒートマップです。更新のたびにページの構造が変わると、ヒートマップで見ていたクリック位置がずれて使えなくなるかもしれない。Clarityなんかでユーザーの動きを見ている場合、構造が安定していないと分析しづらくなりそうだなと。
4つめはサービスへの依存です。Manusが値上げしたら、仕様が変わったら、サービスが終わったらどうするのか。便利なぶん依存度も高くなるので、逃げ場をどう確保しておくかは考えておいたほうがいいかなと思ってます。
逆に思ったより大丈夫そうなところもあります。構造化データは勝手に入るみたいですし、JavaScriptで動いているわりに表示は速い。ヘッドレスな構成なのかもしれません(ここは詳しくないので違ったらすみません)。
未知すぎてわからない、という感じではありますが。
Google検索が出てきたときも最初はみんなわからなかったし、AIが出てきたときもそうでした。やってみないとわからないことが多すぎる。最初から全部わかってから使い始めるものでもないと思っているので、使いながら検証していくしかないのかなと思ってます。
WordPressが出てきたときと同じじゃないか
自分のようにManusに懐疑的な人の気持ちもわかります。新しいものに対して「本当に使えるの?」と思うのは当然です。
ただ、これってWordPressが出てきたときと似ているなと思うんですよね。
WordPressが普及しはじめた頃、同じようなテーマを使ったサイトが大量に作られました。作る側からすると見慣れたデザインばかりで飽きるし、「似たようなサイトばっかり」「これで本当にいいのか」という声もありました。
思い出すと、当時も「ソースコードが汚い」「汚いからSEOに弱い」「デザインが画一的でプロの仕事じゃない」と散々言われていました。専門家ほどそう言っていた気がします。それでも最後に勝ったのは「自分たちで今すぐ更新できる圧倒的なスピード」でした。多少コードが汚くても、デザインが似ていても、自分たちで好きなときに直せるという価値のほうが、現場では強かったんですよね(その後、バージョンアップが面倒とか攻撃されやすいという話が出てきたのは別の問題)。
ところがデザインの画一性についても、ユーザーからするとそうじゃなかったんですよね。よく見るデザインだからかえって安心する、迷わず使える、という反応のほうが多かった感じです。作り手が飽きているだけで、見る人にとっては新しくて見やすいサイトでした。
結果としてWordPressは中小企業のサイト制作を変えました。それまで制作会社に頼まないとどうにもならなかったものが、自分たちである程度作れるようになった。
Manusも同じ道をたどる可能性があるんじゃないかなと思ってます。AIっぽいデザインだと言う人もいるかもしれませんが、ぱっと見でちゃんとしていれば、ユーザーはそこより情報が正確で新しいかどうかを見ているはずです。デザインルールさえある程度決まっていれば、けっこういいものができる。デザインのスキルがなければそこだけ人に頼めばいいんですが、頼むのもデザインそのものじゃなくてデザインのルールづくりまでで済むようになる、という感じかなと。
もっと言うと、これはWordPressだけの話でもないなと思ってます。黒電話が携帯電話になってスマホになった、印刷物がホームページになった、馬車が蒸気機関に置き換わった。新しいものが出てきたときは毎回「前のほうがよかった」「あんなのは使えない」と言われて、それでも結局は便利なほうに移っていきました。AIでサイトを作るというのも、たぶんその一つなんですよね。いま「使えない」と言っている部分は、数年後には誰も気にしていない気がします。
今回はManusだったけど、これはAIの話
今回はたまたまManusの話をしましたが、これってManusに限った話じゃないなと思ってます。
Claudeでもサイトみたいなものは作れますし、Manus以外にも同じようなツールがいくつも出てきています。どれがいちばんいいとか、ここでは正直わからないです。自分もまだ全部を触れているわけじゃないので。
ツールが何であれ起きていることは同じで、ウェブサイトを「作る」がボトルネックじゃなくなってきている、ということなんですよね。AIがそこを肩代わりしてくれるなら、ボトルネックは「作る」から「誰に何を伝えるか」に移ります。
そう考えると、支援する側の仕事もけっこう変わるなと思ってます。
クライアントの想いややっていることを引き出して、AIにいい感じでホームページを作らせる。これが仕事になる。更新も同じで、引き出してAIに反映させる。データもそうで、GA4やClarity、Search Consoleを見てAIが「ここをこう直したらどうですか」と提案してきて、それを人間が判断して、またAIが反映する。こういう流れになっていくはずです。
これらも全部AIになってもおかしくないんですよね。引き出すのも、作るのも、分析するのも、反映するのも。
職種の境目も変わっていく気がします。今までデザイナー、コーダー、ライターと分かれていた仕事が、「AIを使ってクライアントの意図をちゃんと形にできる人」に寄っていくのかなと。手を動かすスキルそのものより、何を伝えたいかをくみ取ってAIに表現させる力のほうが効いてくる。そうなると、PhotoshopやIllustratorみたいなAdobeの製品とか、Wordみたいなツールはどうなるんだろうと思ったりします。なくなりはしないでしょうが、「それが使える」ことの価値は今より下がるのかもしれません。このへんは予想でしかないですが。
とはいっても、今までの流れと同じでクライアント自身でやろうとすると、どこかで面倒になってやらなくなる。最初は張り切って更新していても、本業が忙しくなれば後回しになって、気づいたらまた放置されたサイトに戻っている。これは仕組みやツールの問題じゃなくて、人間ってそういうものだという話です。だからその面倒を代わりに引き受けて、ちゃんと続けさせるところに外部の価値が残るのかなと思ってます。
まとめ
ウェブサイトは「作る」がボトルネックで、言いたいことをすぐに正確に出せませんでした。AIがそこを肩代わりしてくれるなら、勝負どころは「誰に何を伝えるか」に移ります。これは前回のおばちゃん対策の話そのものなんですよね。作る手段が出そろってきたいまこそ、何を伝えるかを考える番なのかなと思ってます。
URLやクロールみたいに、まだわからないことはたくさんあります。そこは使いながら整えていけばいい話で、わからないから手を出さないだと結局また看板のままになってしまう。
知り合いの社長が10時間で頭の中をサイトにしているのを見て、これは試す価値があると個人的には思いました。まだ整理しきれていないところもあるので、しばらく触って検証してみようと思ってます。
